LangGraphとは?実例から使い方まで
更新日: by Heysho
大規模言語モデル(LLM)を使ったアプリ開発が広がる中、長時間動作する AIアシスタントや複雑な会話の流れを安定して運用するための基盤として LangGraph が注目を集めています。
LangChain の拡張機能として開発されたLangGraphは、 グラフ(図)を使って処理の流れを設計でき、状態を保持しながらループ処理も シンプルなコードで実現できるのが特徴です。
2025年5月に正式リリースされたLangGraph Platformでは、作成した グラフをボタン一つでAPIとして公開でき、負荷に応じて自動拡張する 本番環境にすぐにデプロイできます。
すでに数百社がこのプラットフォームを活用し、 実験段階のチャットボットを商用サービスに素早く移行しています。
この記事では LangGraphの基本からLangChainとの違い、 そして具体的な使い方まで、サンプルコードと最新情報を交えて解説します。
目次
- LangGraphとは? - 基本的な考え方を理解しよう
- LangChainとの違い - どんな場面で使い分ける?
- メリットとデメリット - 導入する価値はある?
- 基本的な部品 - ノードとエッジって何?
- 実用例 - 企業での具体的な活用方法
- 使いこなすテクニック - より高度な活用法
- 学習リソース - 上達するための情報源
- 基礎知識と将来性 - これからどう発展する?
- まとめ - 重要ポイントの振り返り
LangGraphとは?
LangGraph とは - AIアプリケーションのフロー設計ツール
LangGraph は、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を使ったAIアプリケーションの処理の流れを グラフ(図) として設計・実行・監視できるフレームワークです。
ノード(処理の各ステップ)とエッジ(次にどのステップに進むか)を組み合わせることで、「もし〇〇なら△△へ進む」といった分岐や「条件を満たすまで繰り返す」といったループをわかりやすく記述できます。
- グラフ構造でフローを管理 ― 「どの状態からどの状態へ進むか」を明確にしてバグを減らせます。
- 拡張性 ― 天気APIの呼び出しや、GPT-4からLlamaへの切替えなどを簡単に追加できます。
- 対話アプリに最適 ― 「ユーザーが質問→AIが回答→さらに質問」といった会話の流れを数行で表現できます。
スパゲッティコードからの解放 - LangGraphが生まれた理由
LLMを使ったアプリが複雑になるにつれ、「もしこの回答なら次はこの処理」といった if文と繰り返し処理だらけの複雑なコード("スパゲッティコード")が増え、 メンテナンスや問題追跡が難しくなりました。
LangGraphは「状態A→状態B→状態C」といった 図式的な記法を採用し、処理の流れの可視化・再利用・デバッグ を簡単にすることで この問題を解決します。
LangChainとLangGraph - 相互補完する2つのフレームワーク
- LangChain:プロンプトの管理やツール呼び出し、一方通行の処理連鎖に強い → 「質問を受けて→検索して→回答する」といった単純なタスク向け。
- LangGraph:状態の管理・繰り返し処理・複数AIの連携を グラフで記述 → 「ユーザーの要望を理解→計画を立てる→実行→結果確認→必要なら修正」といった複雑なワークフロー向け。
両者は競合ではなく、むしろ補完関係にあります。
例えば、LlamaIndexで社内文書から関連情報を検索し、その結果をLangGraphで構築したAIエージェントに渡して詳しく分析するといった組み合わせが実務では増えています。
LangGraphとLangChainの違い
機能面での比較 - 直線的処理 vs グラフ型処理
- LangChain
- 直線的な処理の流れ(LLM → ツール → LLM …)を Chain として記述
- テンプレート機能や会話履歴の保存機能が標準で使える
- 「質問に答える」「検索して回答する」といった単発タスク向き
- LangGraph
- 処理の各ステップ(ノード)と進む道筋(エッジ)で複雑な流れを表現
- 「もし〇〇なら△△へ進む」といった分岐や繰り返しを図で管理
- 長時間続く会話や複雑な判断が必要なAIアシスタントに最適
使い分けのポイント - プロジェクトの複雑さで判断
LangChain は簡単なAIアプリを素早く作るのに便利です。一方 LangGraph は次のような場面で役立ちます:
- 「予約したいですか?」→「はい」→「日時は?」→「人数は?」のように会話が枝分かれするチャットボット
- 「情報を集める→計画を立てる→実行する→結果を確認する→必要なら修正する」といった複数ステップの処理
- 企業での大規模運用で、処理の流れを監視したりエラー時に前の状態に戻したりする必要がある場合
選択ガイド - プロジェクトタイプ別おすすめ
| こんな時は | おすすめは |
|---|---|
| 「質問→検索→回答」のような単純な流れ | LangChain |
| 複雑な分岐や繰り返しがある会話システム | LangGraph |
| まずは試作品を作り、後で本格的に拡張したい | 最初はLangChain、後でLangGraphに移行 |
LangGraphを選ぶ具体的なメリット
- 処理の流れが図で見えるので、バグを見つけやすい
- 「もし在庫がなければ代替品を提案する」といった複雑なロジックも少ないコードで書ける
- LangGraph Platform(2025年正式リリース)を使えば、大規模運用も簡単
LangGraph の長所と短所
主なメリット
複雑なAIフローを視覚的に理解できる
処理の流れを図(ノードとエッジ)で表現するので、複雑なコードでも整理しやすくなります。例えば「質問を受ける→検索する→回答する」という流れが一目でわかります。
モジュール式の拡張性
自分で作った関数を新しいノードとして追加するだけで機能拡張できます。例えば「天気APIを呼び出す」ノードを追加するのも数行で済みます。
会話の文脈を安全に管理
会話の履歴や途中結果を「State(状態)」として保存するので、長い会話でも途中で切れる心配がありません。
非エンジニアとの協業がしやすい
「このAIはこういう流れで動きます」という図を、プログラマーでない人にも見せて説明できます。
本番環境デプロイの簡素化
LangGraph Platformを使えば、ボタン一つでウェブサービスとして公開でき、動作状況も監視できます。
課題・制限
学習曲線がやや急
「状態」や「グラフ」という考え方に慣れていないと、始めるのに時間がかかることがあります。
例えば車の運転と同じで、最初は複雑に感じても慣れると自然に使えるようになります。
日本語リソースの不足
英語の公式ドキュメントは充実していますが、日本語の記事やチュートリアルはまだ数が限られています。
実績と事例の蓄積途上
LangChainと比べると、大規模プロジェクトでの採用事例がまだ少なめです。
ただし急速に増えています。
適したユースケース
マルチターン対話型AIアシスタント
例えば「予約を受け付けるAI」で、「何名様ですか?」「いつがご希望ですか?」と質問を重ねていくような対話システム。
複数ステップの連続処理
例えば「情報を集める→計画を立てる→実行する→結果を確認する」といった一連の流れを管理するAI。
エンタープライズ向けAIシステム
会話の状態を保存・復元できるので、万が一の障害時にも安全に運用できます。
不向きなユースケース
- 単純な質問応答システム ― 「今日の天気は?」と聞いて答えるだけなら、LangChainの単純なチェーンで十分です。
- プロトタイプ・MVP開発 ― とりあえず動くものを作りたい場合は、LangChainのほうが手軽に始められます。
LangGraphの基本部品 - どんなパーツで構成されているか
1. 全体の設計図 - State Graph(状態グラフ)
LangGraphの中心となる構造で、AIアプリ全体の流れを表します。
例えば「ユーザーの質問を受ける→情報を検索する→回答を生成する」という一連の流れをノード(各処理)とエッジ(次の処理への道筋)で表現します。
各ノードはState(状態情報)を受け取って更新します。
2. 処理の単位 - Nodes(ノード)
「何をするか」を定義する処理の単位です。
例えば「天気を調べる」「データベースを検索する」「AIに質問する」などの機能を各ノードとして定義します。
通常のPython/JavaScript関数をそのままノードとして使えるので、既存のコードも簡単に組み込めます。
3. 処理の道筋 - Edges(エッジ)
「次にどこへ進むか」を決める道筋です。
例えば「在庫があれば注文処理へ、なければ代替品提案へ」といった分岐や、「回答が不十分なら再度質問する」といったループも簡単に設定できます。
複雑な判断ロジックも視覚的に理解しやすくなります。
4. 共有データの保管庫 - Graph Context
会話の履歴や設定情報など、全体で共有するデータの保管庫です。
例えば「ユーザーの好み」「前回の質問内容」「APIキー」などを保存しておけば、どのノードからでもアクセスできます。
長い会話や複数のAIが協力するシステムでも情報共有が簡単です。
5. 進行条件 - Transition Conditions
「どんな条件で次に進むか」を決めるルールです。
例えば「ユーザーが『終了』と言ったら会話を終える」「3回失敗したら人間のサポートに切り替える」といった条件を設定できます。
無限ループを防いだり、エラー時のリカバリー処理も組み込めます。
図で表現する利点 - なぜグラフ構造が役立つのか
一目でわかる設計図
「もし〜なら〜する」という複雑な条件分岐も図で表現できるので、コードが複雑になりません。
例えば「質問→検索→回答→満足度確認→(不満なら再検索)」という流れが一目でわかります。
部品の再利用と個別テスト
「天気を調べる」ノードを作れば、別のAIアプリでも同じノードを使い回せます。
また、各ノードは独立しているので、個別にテストしやすくなります。
チーム開発の効率化
LangGraph Studioを使えば、実際の動きを図で確認できるので、エンジニアでない人にも「このAIはこう動いています」と説明しやすくなります。
本番サービスへの移行
開発したAIアプリをLangGraph Platformで簡単に公開でき、アクセスが増えても自動的に処理能力を拡張できます。
LangGraphの実用例 - 企業での具体的な活用方法
問い合わせ対応の自動化 - カスタマーサポートの効率化
「製品の返品方法を知りたい」という問い合わせを自動で判別し、返品手続きの案内フローへ誘導します。
複雑な問題は人間のオペレーターへスムーズに引き継ぐことで、対応時間を大幅に短縮できます。
社内情報の賢い検索 - 必要な資料をすぐに見つける
「新入社員研修の資料はどこ?」という質問に対して、社内文書から関連情報を探し出し、最も適切な文書と回答を提供します。
単なるキーワード検索より文脈を理解した検索が可能になります。
LangGraphを使いこなす - より高度な活用テクニック
自分だけの処理ブロックを作る - カスタムノードの作成
単純な関数だけでなく、クラスを使った高機能なノードも作れます。例えば、「データベース接続」ノードを作り、初期化時に接続設定を読み込み、エラー時には自動的に再接続を試みるといった複雑な処理も実装できます。
複数の処理を同時に行う - 応答速度を上げるテクニック
複数の処理を同時に実行して応答速度を上げられます。例えば「天気情報を取得」と「ニュースを検索」を並行して行い、両方の結果が揃ったら回答を生成するといった効率化が可能です。
トラブルへの対応策 - エラーが起きても止まらないシステム作り
「APIが一時的に応答しない」などのエラーを検知し、「少し待ってから再試行する」ノードへ自動的に切り替えることができます。例えば、外部サービスへの接続に失敗したら「すみません、現在情報を取得できません。別の質問はありますか?」と伝えるフローも簡単に作れます。
動作確認の方法 - 問題を早く見つけて修正する
- 部品ごとの確認:「天気取得」ノードだけを単独で実行し、正しい情報を返すか確認できます。各部品を個別にテストすることで、バグの早期発見が可能です。
- 一連の流れの確認:「ユーザーが予約をキャンセルする」という一連の流れを最初から最後まで通して確認できます。実際のユーザー体験に近い形でテストできるのが強みです。
LangGraphの学習リソース
公式ドキュメント & GitHub
最新の使い方や機能は公式GitHubで確認できます。初心者は「Getting Started」から始めるのがおすすめです。
チュートリアル
「天気を教えるボット」や「レシピ提案AI」など、実際に動くサンプルコードがexamplesフォルダにあります。これをコピーして少しずつ改造していくのが上達の近道です。
コミュニティ
「エラーが出て困っています」「こんなAIを作りたいけどどうすれば?」といった質問を、SlackコミュニティやStack Overflowで気軽に相談できます。先輩開発者からアドバイスをもらえるチャンスです。
LangGraphの基礎知識と将来性
LangGraph を簡単に理解する
LangGraph の本質
AIアプリの「会話の流れ」を図のように設計できるツールです。
「質問を受ける→情報を調べる→回答する」といった流れを視覚的に管理できます。
LangChain と何が違うの?
LangChainが「一方通行の道路」なら、LangGraphは「交差点や迂回路のある道路網」のようなものです。
複雑な分岐や繰り返しが必要なAIに向いています。
良いところ
複雑なAIの動きが図で理解できる、機能の追加が簡単、チームでの共同開発がスムーズになります。
難しいところ
まだ新しい技術なので日本語の解説が少なく、最初は学習に時間がかかることがあります。
これからどうなっていくの?
AIが「単純な質問に答える」から「複数のステップで問題を解決する」へと進化するにつれ、LangGraphのような会話フロー管理ツールの重要性は増すでしょう。
例えば「旅行プランを立てる」AIなら、目的地・予算・日程を順に確認し、最適なプランを提案するといった複雑な対話が必要になります。
AI 業界での重要性
LangGraphは「AIアプリの設計図を描くツール」として、今後のAI開発の標準的な手法になる可能性があります。
特に企業向けの業務用AIシステムでは、安定性と拡張性を両立できるLangGraphの採用が増えるでしょう。
まとめ
この記事では「LangGraphとは何か」から始まり、基本的な使い方、実際のコード例、応用事例まで幅広く解説しました。
特に「LangChainとの違い」や「複雑な会話を管理する強み」について理解を深められたと思います。
初心者の方も、まずは簡単な例から試してみて、徐々に自分のアイデアを形にしていってください。