企業の理想的な企業コンテンツ制作プロセスと各役割

更新日: by Heysho

本記事では、以下のトピックについて詳しく解説いたします。

  • 企業コンテンツ制作に関わる組織体制と役割分担
  • コンテンツの種類と特性
  • 企業コンテンツ制作の理想的なワークフロー

私自身が今まで事業会社での経験を通じて構築した、企業における理想的な企業コンテンツ制作プロセスについてご紹介いたします。

一般的な企業のコンテンツ制作体制

まずは企業コンテンツ制作に関わる主要な部門とその役割について説明します。

  • マーケティング部門 .... オンライン・オフラインを問わず販売促進施策の企画立案を担当
    • プロダクト・マーケティング .... 製品やサービスの販売促進戦略の立案と実行
    • ブランディング ... ビジュアルやコピーがブランドガイドラインに準拠しているかを監督
  • デジタルマーケティング部門
    • SEO ... 検索エンジン最適化によるオーガニックトラフィックの獲得
    • UX/UI ... ユーザー体験設計、インターフェース設計、ユーザーフローの最適化
    • コンテンツ・プロダクション ... CMSを活用したウェブコンテンツの制作・更新
    • 広告、ソーシャルメディア、Eメールマーケティング ... 各チャネルでのプロモーション展開
  • Eコマース部門 ... 在庫管理やEコマースプラットフォームの運用管理
  • IT部門 ... システム開発や技術的実装が必要な場合のサポート
  • 法務部門 ... コンテンツの法的リスク管理と規制遵守の確認
  • プロジェクトマネージャー ... 重要なプロジェクトの進行管理と各部門の調整役。体系的なワークフローが確立している企業では必須の役割です。

これは主に大規模サイトや大企業の場合の構成です。

組織によっては、デジタルマーケティングがマーケティング部門の下位組織となっていたり、Eコマース部門がデジタルマーケティング部門に統合されていたりする場合もあります。

コンテンツの種類と特性

コンテンツの種類によって制作フローは異なります。代表的なコンテンツタイプは以下の通りです。

  • プロモーション系コンテンツ ... セールやキャンペーンなど、直接的な販売促進を目的としたもの
  • エディトリアル系コンテンツ ... ユーザーの知識向上や信頼構築を目的とした情報提供型コンテンツ。最も複雑な制作プロセスを要し、SEOチームが深く関与します
  • ニュース系コンテンツ ... 企業情報やプレスリリースなど。比較的シンプルなプロセスで制作されます

企業コンテンツ制作のワークフロー

プロモーション系コンテンツの制作フロー

  1. プロダクトマーケティングチームがオンライン・オフラインを包括した販促企画を立案
  2. デジタルチャネル向けに最適化された企画内容を法務、SEO、UX/UIチームがレビュー
  3. 承認後、Eコマースチームが必要な機能設定やシステム対応を実施
  4. コンテンツ・プロダクションチームがウェブサイト上の該当ページを更新(トップページバナーの差し替えなど)
  5. 公開後、広告/ソーシャルメディア/Eメールマーケティングチームが各チャネルで展開

エディトリアル系コンテンツの課題

多くの企業がこのプロセスで苦労しています。

一般的によく見られる非効率なフローは以下の通りです。

  1. マーケティング部門が自社視点でコンテンツを企画
  2. SEO、UX/UIチームが「このコンテンツの目的は何か」と疑問を持ちながらも最適化を試みる。しかし、そもそもの企画がユーザーニーズと乖離しているため、十分な効果が得られない

よくある誤解として、マーケティングチームやブランディングチームが「魅力的で洗練されたコンテンツを作れば自然に効果が出る」と考えてしまうことがあります。

エディトリアル系コンテンツの理想的なフロー

本来は、UX/UIチームによるユーザー調査から得られたインサイトや、SEOチームのキーワードリサーチに基づいてコンテンツを企画すべきです。

理想的なフローは以下のようになります。

  • SEOチームがキーワードリサーチやユーザー調査データを分析し、ニーズに基づいたトピックを選定して記事を企画・作成
  • 法務部門のレビュー後、コンテンツ・プロダクションチームが公開作業を実施
  • 公開後、広告/ソーシャルメディア/Eメールマーケティングチームが戦略的に拡散

つまり、最も効果的なアプローチでは、ユーザーニーズを最も理解している部門が主導権を持つべきです。

企業コンテンツ制作の具体的な手順

各担当者の具体的な役割と作業工程は以下の通りです。

  1. 綿密なキーワードリサーチに基づくターゲットキーワードの選定(SEO担当)
  2. コンテンツフォーマットの決定と設計(SEO担当)
  3. 詳細なコンテンツアウトラインの作成(SEO担当)
  4. 専門知識を活かした執筆作業(ライター)
  5. SEO観点からの編集・最適化(SEO担当)
  6. ブランドガイドラインに沿った画像制作(デザイナー)
  7. 多角的な品質チェックとレビュー(法務部門、プロジェクトオーナーなど)
  8. CMSを使用したコンテンツ公開(コンテンツ管理担当)
  9. 戦略的なコンテンツプロモーション展開(ソーシャルメディア、Eメールマーケティングチーム)

コンテンツプロモーションの重要性

現在の海外SEO業界では「企業コンテンツ制作20%、プロモーション80%」という考え方が主流になりつつあります。

これは、優れたコンテンツを作るだけでなく、そのコンテンツを適切に拡散するための活動により多くのリソースを割くべきという考え方です。

まとめ

私自身、企業のインハウスSEO担当として、戦略的根拠のない提案に対しては上記のフレームワークを説明するようにしています。

もちろん、各部門がコンテンツ制作に関与したいという意欲は尊重すべきですが、最終的にはユーザーニーズを最も把握しているSEO担当者が企業コンテンツ制作をリードすることで、最大の効果を得ることができます。

ご精読いただき、ありがとうございました。