SEOの月次解析レポートの作り方【サンプルあり】

更新日: by Heysho

「SEOレポートの作り方が分からない」「効果的な月次報告の構成は?」「経営層に伝わるSEO成果の見せ方を知りたい」というお悩みにお答えするために、以下の内容について実践的に解説していきます。

  • SEO成果レポート重要
  • 一般的なSEO成果レポートに含まれる項目
  • SEO成果レポートのフォーマット(テンプレート)
  • 大規模サイトのSEO成果レポートの例
  • 各項目のトラッキングに必要なツール
  • 参考にしたいレポートの例
  • 他Q&A

SEO成果レポート重要

インハウスSEO担当者として他部署にSEO成果レポートを共有する活動は非常に重要です。その理由は以下の通りです。

  • 現代のSEOは単一チームの取り組みだけでは限界があり、他部門との協業が不可欠 → SEO成果レポートを共有することで、他チームのSEO貢献度を可視化し、SEOを意識した活動を促進できる
  • SEOは重要性に比して過小評価されがちであり、存在価値を適切にアピールしなければ優先順位が低くなりやすい
  • SEOは専門性が高いため、明確なレポーティングがなければ「何を実施しているのか分からない」という印象を与えてしまう

これまで複数のチームに所属してきた経験から、適切なSEOレポーティングを実施できているSEO担当者は少ないと感じています。

一般的なSEO成果レポートに含まれる項目

初心者編

以下の4つの項目が最も基本的な要素です。

  • Google Search Consoleレポート
    • 検索結果からのインプレッション
    • 検索結果からのクリック数
  • Googleアナリティクスレポート
    • オーガニック検索からのトラフィック
  • 検索順位トラッキングツール(GRCなど)
    • ターゲットキーワード(100~1000個)の検索順位

中級者編

専任のSEO担当者がいる場合は、以下のような指標を追加することでより包括的な分析が可能になります。

  • Google Search Consoleレポート
    • テクニカルエラーの数
    • Web Core Vitalのスコア
    • Googleディスカバーのレポート
  • Googleアナリティクスレポート
    • オーガニック検索からのコンバージョン

上級者編

  • SEOツール(SEMRush、Ahrefなど)
    • 被リンクの数
    • サイテーションの数
  • コンテンツマップ
    • 各ページのトラフィックなどを分析
  • Webpagetest.org
    • 特定のページのパフォーマンスを計測

ターゲットキーワードが多数ある場合の検索順位報告の最適化

SEO担当者は通常1000個程度のターゲットキーワードをモニタリングしていますが、これらをエクセルで共有することが難しい場合があります。

このような状況では、「1~3位までにランクインしているキーワードの数」を集計して報告することが効率的です。

ただし、全てのキーワードを対象にすると関連性の低いキーワードも含まれてしまうため、「10クリック以上」などの条件でフィルタリングすることが重要です。

SEO月次レポートのテンプレート・サンプル

こちらは私の実験用サイトの実際のデータです。

効率的なレポート作成のヒント:

  • 今月の数値が前月比より大きい場合:「今月の数字は前月比〇〇%上昇しました」と記述します。
  • 今月の数値が前年比より大きい場合:「今月の数字は前年比〇〇%上昇しました」と記述します。

効率的なレポート作成のためには、手動入力を避け、Google Analyticsのアドオン、Vlookup関数、マクロなどを活用して自動化することをお勧めします。

自動レポート生成ツールについて

複数のSEOツールがレポーティング機能を提供しています。

私の経験では、SEMRushやCondoctorのレポート機能が特に優れていました。

大規模サイトのインハウスSEOチームがシニアマネージャーに報告する際のフォーマット

大規模サイトのSEO成果レポートはより複雑で、ブランディング、広告、SNS、サイトUXの変更など、多様な要素の影響を受けます。

各部門のSEOへの貢献を適切に評価するため、以下の項目を報告していました。

  • 認知の拡大
    • ブランド名のサイテーションや検索ボリューム
    • 被リンクの数
    • 検索順位(一般的なキーワード、ファネル上部のジャンル)
  • サイトのアクティビティに関わる指標
    • オーガニック・トラフィック
    • 参照トラフィック
    • 新規のオーガニック・ユーザー
    • 検索順位(ブランド関連キーワード、ファネル中部のジャンル)
  • 売り上げ増加への貢献
    • オーガニック・トラフィックのPages/Session
    • オーガニック・トラフィックのサイト滞在時間
    • 検索順位(コンバージョンに直結するキーワード)
  • その他
    • コンテンツマップ
    • ページスピードレポート
    • Google Discoverレポート

これらは3つの主要フェーズに分類されており、各フェーズで関連する部署が異なるため、部署間で共通のKPIを設定することが効果的です。

各フェーズにおける他部門との連携ポイントは以下の通りです。

認知の拡大

このフェーズではブランディング部門やPR部門との連携が重要です。

PR部門とはアウトリーチ活動で協力し、ブランディングチームとはエディトリアルコンテンツの制作などで連携します。

サイトのアクティビティに関わる指標

ウェブサイト全体の活動量が増えるほど、これらの指標は向上します。

例えば、ディスプレイ広告の予算増加がオーガニック・トラフィックの増加につながることもあります。

売り上げ増加への貢献

このフェーズではUX部門、CRO(コンバージョンレート最適化)チーム、Eコマースチームなどとの連携が必要です。

各項目のトラッキングに必要なツール

Googleアナリティクス

以下の指標を測定できます。

  • オーガニック・トラフィック
  • 参照トラフィック
  • 新規のオーガニック・ユーザー
  • オーガニック・トラフィックのPages/Session
  • オーガニック・トラフィックのサイト滞在時間

SEMRush、Ahref、UberSuggestなど

これらのツールで以下の項目を分析できます。

  • 被リンクの数
  • 検索順位

日本では検索順位の測定にGRCを使用する専門家が多いですが、私はより効率的な方法として、SEMRushを活用するか、Google Search ConsoleのデータをエクスポートしてGoogle Sheetsでレポートを作成しています。

GRCは個人作業には適していますが、グローバル企業でのチーム作業においては一部制約があると感じました。

ブランド名のサイテーション、検索ボリュームを調査する方法

ブランド認知度の測定方法は企業によって異なりますが、一般的には以下の手法が効果的です。

  • Google検索結果でのサイテーションを測定する方法
    • "★ブランド名★"-site:★サイトのURL★(例:Nike-site:https://www.nike.com/)
  • ソーシャルメディアでのオンラインメンションを測定する方法
    • Conductor、Ahrefsなどの専門ツールで定量的に分析
  • ブランド名の検索ボリュームを測定する方法
    • GoogleトレンドやGoogle Search Consoleのインプレッションデータ(1位を継続的にキープできているキーワードに限定)
    • SEOツールの検索ボリュームは精度に課題があるため、正確なレポーティングには適していません

参考にしたいレポートの例

予測値を自動で出力してくれるレポート

将来のトラフィック予測を自動計算し、視覚的にグラフ表示するレポートフォーマットです。

参考 SEO Forecasting in Google Sheets | Moz

Ahrefsが提供しているテンプレート

主にSEO専門会社向けの内容ですが、Ahrefsを活用している担当者にとっては、このテンプレートをベースにカスタマイズすることで効率的なレポーティングが可能です。

参考 私たちのSEOテンプレートを盗もう | Ahrefsオフィシャルブログ

よくある質問

Google Data StudioとGoogle Sheetはどちらが使いやすい?

Google Sheetの方が実務上の利便性が高いです。

以下の理由からGoogle Sheetを推奨しています。

  • ページ読み込み速度が優れている
  • データソースの透明性が高い
  • 柔軟なカスタマイズが可能
  • デジタルリテラシーに関わらず、多くのステークホルダーに馴染みやすいフォーマット

一方、Google Data Studioには以下の課題があります。

  • 読み込み時間が長い場合がある
  • データソースの識別が直感的でない(「このデータの出所は?」という質問が頻発)
  • 修正・更新に技術的な知識が必要
  • 見た目の華やかさに比べ、実用性で劣る場合がある

広告代理店がGoogle Data Studioを推奨する背景には、①データの独自性によるサービス継続性の確保、②修正依頼による追加業務の発生、③メンテナンス契約の継続など、ビジネスモデル上の利点があると推察されます。

リスティング広告、ディスプレイ広告はSEOのスコアに影響するのか?

直接的な影響はないものの、間接的な相関関係が認められています。

広告施策とSEOパフォーマンスの関連性については、業界内でも議論が続いています。調査によると以下の相関関係が示唆されています。

参考 How Google AdWords (PPC) Does and Doesn't Affect Organic Results | Moz

具体的には以下のような間接的影響が考えられます。

  • 広告接触によるブランド認知が、オーガニック検索結果でのCTR向上に寄与する可能性
  • 広告経由での訪問経験がある場合、オーガニック流入時のエンゲージメント指標が向上する傾向
  • 広告露出による認知拡大が、被リンク獲得やソーシャルシェアの増加につながる可能性

また、SEMRushの調査レポートでは、ブランド名の検索ボリューム(指名検索数)がSEOランキング要因として極めて重要であると指摘されています(この見解には専門家間で議論がありますが、一定の相関関係は認められています)。

まとめ

SEOレポーティングは一見技術的なトピックに思えますが、効果的なコミュニケーションツールとしての側面も持ち合わせています。適切な指標選定と分かりやすい可視化により、SEO施策の価値を組織内で共有し、継続的な改善サイクルを構築することが重要です。